
ホームページの管理会社が倒産した――。
そういったご相談をいただくことがあります。
先日もかなり大手の会社さんが倒産してしまったそうで、当社にもその会社に管理を任せていた会社様数社からお問い合わせをいただきました。
電話口の声は、怒っているというより、困り果てている、という感じでの方が多かったように思います。
「全部お任せしていたんです」
その一言に、ホームページの保守管理会社である私たちとしては、たくさんのことが詰まっていると感じました。

ホームページを作ったのは、十年以上前のことだという会社様も多いと思います。
知り合いの紹介だったり、飛び込みの営業だったり、きっかけはさまざまです。
打ち合わせをして、デザインを確認して、公開されて、毎月の管理費を払って。
それで「終わった」と思っていた方がほとんどです。
実際、それで何も困らなかったと思います。
更新があれば連絡すれば対応してもらえたし、あとは何事もなく日々が過ぎていく。
ホームページは「動いている」し、名刺にURLも刷ってある。
それでよかった。
ただ、その「よかった」は、「管理会社がいる」ことが前提だったわけです。

たとえ話をひとつ。
家を建てたとき、完成後に工務店から鍵を受け取りますよね。
当たり前です。
自分の家なのだから、鍵は自分が持っている。
工務店が廃業しても、鍵がある限り、家には入れます。
ところがホームページの場合、「鍵」を渡されないまま完成してしまうことがあります。
鍵は制作会社が持ったまま。
住んでいるのは自分なのに、玄関を開けるには毎回、制作会社に連絡しなければならない。
その状態でも、相手がいる間は何の問題もありません。
「鍵を持っていない」ことにすら気づかない。
でも、相手がいなくなった瞬間、自分の家の前で立ち尽くすことになります。
このホームページの「鍵」にあたるものが「サーバーログイン情報」「ドメイン所有権」「サイトログイン情報」です。

管理会社が倒産したとき、多くの方が最初に気づくのは「必要なものをもらっていなかった」ということです。
ログイン情報がわからない。
サーバーの契約が誰の名義かもわからない。
ドメインを、誰が管理しているのかもわからない。
聞こうにも、もう聞ける相手がいない。
そこで初めて、「お任せしていた」というのは、「預けていた」のではなく、「必要なものをもらっていなかった」のだと気づかれる方も多くいらっしゃいます。

これは、恥ずかしいことでしょうか。
たぶん、そう感じている方もいらっしゃると思います。
「経営者なのに、こんなことも把握していなかったのか」と。
ご自身を責める方もいらっしゃいます。
でも、考えてみてください。
ホームページを作ったとき、「ドメインの名義はどちらにしますか」と聞かれたでしょうか。
「サーバーの契約情報はご自身で保管してください」と言われたでしょうか。
おそらく、多くの場合、そういった説明はなかったのではないかと思います。
わからなかったのではなく、知る機会がなかった。
確認しなかったのではなく、確認すべきだと伝えられていなかった。
そう考えると、「任せていた自分が悪い」とだけ片づけるのは、少し酷な気がします。
この話は、すでに管理会社が倒産してしまった方だけに向けたものではありません。
今、どこかの制作会社にホームページを管理してもらっている方。
毎月の管理費を払って、何かあればお願いして、「全部任せてあるから大丈夫」と思っている方。
その「大丈夫」は、もしかすると、相手がいてくれることだけを根拠にした「大丈夫」かもしれません。

ホームページの管理に関して、すべてを理解する必要はないと思います。
技術的なことは、専門家に頼ればいい。それは間違いではありません。
ただ、「鍵」だけは、自分で持っておいたほうがいいのかもしれません。

- ドメインは誰の名義になっているのか。
- サーバーの契約情報はどこにあるのか。
- 管理画面に入るためのIDとパスワードは、自分の手元にあるのか。
全部でなくていい。
でも、「自分の家に自分で入れるかどうか」だけは、一度確認しておいてもいいのではないでしょうか。
「全部お任せしていたんです」
その言葉を聞くたびに思うのは、その方が怠慢だったということではなく、「任せるしかない状況だった」ということです。
だからこそ、まだ何も起きていない今のうちに、ひとつだけ確認してみてください。



